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2020/01/17

シズルをデザインする

前職時代、「シズルワードの現在 2018改訂『おいしいを感じる言葉』調査報告」(B・M・FTことばラボ編)を読んでから、メニュー名や各種コピーにも意識的にシズルワードを使ってきましたが、先日、同じB・M・FTことばラボ編の「シズルのデザイン 食品パッケージに見るおいしさの言葉とヴィジュアル」という本を本屋でみつけ、早速買って読ませていただきました。

 

私たちはバーモントカレーの『とろ~り』とけてる」で育ち、食べる前から「ガリガリ君」の食感を想像し、ミスドの「ポンテリング」でメジャーデビューした「もちもち」とはどんな味かを知るために思わず買ってしまう、という経験をしてきました。

さらにインスタの進化により、ヴィジュアルや言葉を一目見ておいしさを結び付ける、このことが本当に広がりと深みをもった、だからハーゲンダッツはスプーンですくった後のアイスの断面の絵で十分なわけです。

では食品スーパーの売場でのおいしさ表現とは何なのか、一体何が起こっているのか。

そもそも、食品売場で感じる「おいしさ」は、生鮮の鮮度、みずみずしい葉物野菜、ピチピチした丸魚、肉汁ジュワッ確定の厚切りステーキが主役となり発展してきました。が、調理の手間がかかる素材そのものは伸び悩み、生鮮売場の商品の加工度があがり、生鮮は商品そのものだけでなく「おいしさ表現」自体が少なくなってきました。

その生鮮にとって変わり急速においしさ表現分野でも勢力を伸ばしたのが「惣菜」、並行し、グロサリー系のシズルデザインも拡大、生鮮、特に鮮魚の売場縮小に拍車をかけているように思います。

食の小売りにたずさわった者として、これだけおいしさの表現が進化している中、生鮮売場のおいしさ表現に真剣に取り組んできたのだろうか、いや、していない。

鮮度のよいものをおいておけば価値を伝えられていると思い込み、えびのプリプリ感をいかに表現するかなど考えず、お店でもお客様宅でもロスが出にくい冷凍モノやらを売り込んできた。これだけでは今のマーケットのシズルデザインの進化とさらに差がつき、生鮮はさらに縮小均衡となる。

「できることはまだまだありそうだ」と感じさせる一冊でした。